エバラ時報 No.217 p.1 京都大学大学院工学研究科 教授 (社)化学工学会 会長 三浦 孝一
エバラ時報 No.217 p.3 荒川 清美 ほか
活性汚泥処理における汚泥減容化を目的としたオゾン処理の運転条件と処理水窒素濃度(T-N)の関係を把握するために,ベンチスケール連続実験を行った。オゾン注入量を変えた実験を行い,これらと処理水窒素濃度,汚泥発生量の関係を検討した。汚泥のオゾン処理により余剰汚泥の発生量は減少するが,処理水T-Nが増加する。処理水T-Nの増加量は減少した汚泥に含まれている窒素量とほぼ同じであり,処理水T-Nの大部分はNOx-Nであった。循環型硝化脱窒法で処理することにより,汚泥発生量の減少による処理水T-Nの大部分は脱窒でき,生物学的脱窒素プロセスが汚泥減容化には合理的であった。
エバラ時報 No.217 p.11 玉理 裕介 ほか
下水汚泥を流動床ガス化炉により熱分解ガス化し,発生した可燃性ガス(生成ガス)を用いてガスエンジン発電を行うシステムを開発した。脱水汚泥ベースで処理量15t/d規模の実証設備を建設し,2005年から約3400時間にわたる実証試験で連続運転性,安定性,環境特性を確認し,同設備が実用レベルにあることを実証した。従来の下水汚泥焼却処理設備の代替として本システムを導入することにより,下水処理場の一次エネルギー使用量の約25%,温室効果ガス排出量を約65%削減することが可能であり,温暖化対策として高い効果が期待できる。
エバラ時報 No.217 p.17 松永 康平 ほか
内部循環流動床ガス化炉(ICFG)を用いることで,様々なバイオマスや可燃性廃棄物から高い発熱量の生成ガスを得ることができる。得られた生成ガスは,工業用燃料の代替や,発電,液体燃料合成などに有効に使うことが可能である。試験設備で6700時間以上に及ぶ試験運転を行い,ICFGの可燃性廃棄物からケミカルエネルギーへの転換技術としての様々な性能,実現性を明らかにした。
エバラ時報 No.217 p.22 関塚 智 ほか
風車設置に際しての事業採算性検討において,一般的には風速出現率すなわち頻度を,ワイブル分布を用いて評価しており,平均風速から風速出現率を推定する場合,その分布を表す式において,係数の一つである形状係数を2と仮定したレイリー分布がよく用いられている。しかし,風況及び発電量の算出に及ぼす形状係数の影響については,あまり明らかにされていないのが現状である。そこで,ワイブル分布における形状係数の変化が風況及び発電量に与える影響を確認し,併せてワイブル分布での平均風速と正規分布での平均風速との関係を明らかにした。また,実機サイトの風車実測データに基づいた形状係数の有効性も確認した。
エバラ時報 No.217 p.30 内田 義弘 ほか
立軸ポンプでは,回転体(インペラ等)や水中軸受などが点検・補修しにくい床下部(吸込水槽)に設置されており,維持管理に難があった。特に従来のポンプでは水中軸受がポンプボウル内に設置されており,点検・交換の際には,ポンプの引き上げ作業が必要となり,多大な労力と費用を要していた。荏原グループにおいては,この点に鑑み,ポンプボウル内に消耗部品となる水中軸受を設けずに,ポンプインペラの下部に設けた構造として,ポンプを引き上げずにポンプ水槽内に点検員が入り摩耗状況等が確認でき,かつ,摩耗した場合は,その場で交換ができる維持管理性の良い新形立軸ポンプを製品化し納入した(特許出願中)。
エバラ時報 No.217 p.32 國友 新太 ほか
閉鎖性水域に発生するアオコ(ミクロキスティス属などの浮遊性藍藻類)の除去・発生防止を目的とした水中パルス放電式アオコ増殖防止装置を開発した。この装置は放電により発生した衝撃波でアオコ細胞内の気泡を特異的に破壊し,無光低温である湖底へと沈降させて活性を低下させることで増殖を抑制する。アオコの細胞膜や群体を破壊しないため水質汚染がなく,気泡をもつアオコだけを対象としているためほかの生物への影響は少ないなどの特長をもつ。処理効果は濁り成分やアオコ濃度に依存せず,枯葉や小枝などの夾雑物ごと処理することが可能である。台船形状をしているためアオコが発生している場所へ容易に移動できるため,ダムや湖沼の入り江,水深の浅いため池などへの適用が可能である。
エバラ時報 No.217 p.36 甲斐 正之 ほか
当社の長年の流動床技術を基に開発した新型炉「内部循環型流動床ガス化炉TWINRec ICFG」は,そのユニークな構造によりバイオマスや廃棄物から効率良く高濃度可燃性ガスを得ることが可能である。当社袖ヶ浦技術開発試験所での実証試験を通じ,ICFGで得られる可燃性ガスが,ガスエンジン,ガスバーナなどの代替ガス燃料として十分に利用可能であることを確認した。ICFGは多様な廃棄物に対応可能であり,得られる可燃性ガスは精製してガス燃料や液体燃料など,設備周囲のエネルギー需要に合わせた形態で利用できる。その汎用性の広さは,様々な状況における更なるエネルギー活用の可能性を有している。
エバラ時報 No.217 p.41 川西 卓
固体高分子形燃料電池(以下PEFC)は内燃機関に比べ効率が高く,一次エネルギー削減効果及びCO2排出量削減効果の大きいエネルギーシステムで,自動車用駆動源や家庭用分散型電源として普及が期待されている。今回市場投入を開始した灯油仕様家庭用燃料電池コージェネレーションシステムは,灯油を改質するシステムでありながら,都市ガスやLPG燃料とほぼ同等の高い実用性能を有していることを実証した。
エバラ時報 No.217 p.44 三浦 信二 ほか
当社は,沸騰水型(BWR)原子力発電に多数の復水脱塩装置を納入してきたが,それに加え全く新しいイオン交換樹脂の洗浄システムを,Radiological Solutions, Inc.から調達した振動式分離機と装置基本設計に基づき,2005年10月に納入した。このシステムの優れた点としては,クラッドと破砕樹脂の健全樹脂からの優れた分離効率,目詰まりしない分離スクリーン,少ない廃液発生量,特別に設計されたオーバーパック,及びコンパクトな装置設計である。このシステムは日本原子力発電(株)東海第二発電所で今までに約1年間運転され,顧客によって運転データの収集と分析が行われている。
エバラ時報 No.217 p.50 松岡 庄五 ほか
中部リサイクル(株)はサブマージドアーク炉(還元式電気抵抗炉)と脱塩設備をコア設備とし,各種焼却設備から発生する燃えがら,ばいじん及び通常は埋立処分される高濃度の塩分を含有する溶融飛灰も再資源化を可能とした。その結果,溶融により発生する産物(磁選メタル,溶融メタル,スラグ,溶融飛灰)をすべて付加価値の高い有価物とすることに成功し,ゼロエミッションファクトリーの達成に至っている。2004~2006年度の実績累計では,約64000トンの燃えがら・ばいじんを受入れ,約3100トンの磁選鉄,約35000トンの徐冷スラグ,約3700トンの溶融メタル,約700トンの亜鉛・鉛原料を生産した。
エバラ時報 No.217 p.55 山﨑 賢二 ほか
千葉県銚子市に当社が建設中であった銚子ウィンドファームが2007年2月に完成した。本ウィンドファームには,荏原フライデラーウインドパワー(株)製の1500kW風力発電機(型式:EPW1570)が7基導入された。同一発電所に複数の風車を導入する「ウィンドファーム案件」としては同社初である。
エバラ時報 No.216 p.1 (独)日本原子力研究開発機構 高崎量子応用研究所 所長 量子ビーム応用研究部門 副部門長 南波 秀樹
エバラ時報 No.216 p.3 関塚 智 ほか
風車は非一様で非定常性の強い風況下で稼動することが多く,風速は定常時にも絶えず変化しており,特に,風車始動時や停止時を含め,風車の出力急変時における各電気的諸量の過渡的挙動を把握しておくことは,風力発電システムの特性を全体的に評価するうえでも重要である。今回,非同期の巻線形誘導発電機を備えたピッチ翼可変速風車と,同じく非同期のかご形誘導発電機を備えたストール翼固定速風車の2種類の異なる出力制御を行うプロペラ形風車について,風車出力変化時における各諸量を測定し,過度的変化時の性能の挙動について検討を行った。その結果,風車出力変化時にそれぞれの出力制御方式により特長的な挙動を示すことが明らかとなった。
放射線グラフト重合法による機能性高分子材料の開発とその応用例
エバラ時報 No.216 p.11 藤原 邦夫
放射線グラフト重合法は既存の高分子素材(基材)に,その形状を生かしながら,機能を付与できるので,分離機能性材料の製造方法として優れている。荏原グループは放射線グラフト重合技術の研究・開発に約20年の歴史を有し,空気浄化や水の浄化など様々な分野に用途開発を行い,製品化してきた。2000年には放射線グラフト重合素材の製造を生業とする(株)イー・シー・イーを設立し,外部にもグラフト製品の提案を開始した。
エバラ時報 No.216 p.17 大島 穣 ほか
重金属汚染土壌の処理法として,電解還元法を開発した。本法は,分級洗浄法で重金属が濃縮された細粒分汚染土壌スラリーを,電解還元設備に受け入れて処理するものである。これにより,汚染土壌を外部に搬出することなく,全量を現地で処理・埋め戻すことが可能となった。この技術はめっきの技術を応用したもので,スラリーのpHを下げて,更に,酸化還元電位を下げることにより,土壌中に存在する溶解しにくい重金属化合物を溶液中に溶解するとともに,電極に重金属を析出させる技術である。これにより,溶液の重金属溶解量の飽和を防ぎ,土壌からの効率良い重金属の除去が可能となった。現状は鉛汚染土壌を対象としている。
エバラ時報 No.216 p.21 魚住 建司 ほか
本施設は,(株)GE(大阪府堺市)に2004年9月に納入し,現在まで順調に稼動している。取扱う廃棄物は,汚泥,廃プラスチック類,木くず,紙くず,繊維くず,動植物性残渣,感染性医療廃棄物,廃酸・廃アルカリ,廃油,汚泥など多種多様で,物性や発熱量が異なるが,ロータリーキルンでバランスよく乾燥及び燃焼させ,後段のストーカ上と二次燃焼室で完全燃焼させている。また,燃焼排ガスが有する熱エネルギーは廃熱ボイラで蒸気として回収し,その蒸気はタービン発電機による265kWの発電と汚泥乾燥機,排ガス再加熱器の熱源に利用している。
全幅せきに関する国際規格の現状とISO/TC113/SC2ロンドン会議
エバラ時報 No.216 p.25 大嶋 政夫 ほか
SO/TC113/SC2会議が2006年4月27,28日の両日ロンドンにおいて開かれた。この会議で薄刃せきを用いた開水路流量の測定に関する国際規格案(ISO/DIS1438-1)が審議されたが,この規格案では,大形ポンプの吐出し量測定に広く用いられている全幅せきについては,Rehbock式だけを規定して,現規格に規定のJIS式を含めた他の公式は削除されている。同式は,せき板高さ1m以上では,測定値に対し大きな差を示している。著者らは上記会議に出席して,せき板表面で発達する境界層の流量係数に及ぼす影響を説明しながら,せき高さ1m以上での適用のためのRehbock式の修正式を提案した。
エバラ時報 No.215 p.1 国立大学法人 東京工業大学 統合研究院 教授 柏木 孝夫(前 国立大学法人 東京農工大学 教授)
エバラ時報 No.215 p.3 小塚 浩志 ほか
LCAは,製品の製造から使用,廃棄に至るまでの環境負荷を定量的に把握し,評価する手法である。羽田工場及び協力会社の環境データと生産管理データを組み合わせてサプライチェーンの環境負荷原単位を算出しデータベース化した。このデータを使用し,個々の製品については,製作仕様を使用して環境負荷を算出するシステムを構築した。この方法により,受注生産品である大型ポンプの環境負荷の算出が容易となり,環境配慮製品の提供に貢献することができる。また,各工程における問題点を把握することが可能なため,環境負荷低減活動の推進・実施を効率的に行うことができる。
晶析技術を用いた嫌気性消化汚泥からのりん資源回収プロセスの開発
エバラ時報 No.215 p.14 島村 和彰 ほか
筆者らは,水処理系のりん負荷低減とMAP回収量の増加を目的に,消化汚泥中のMAPを回収すると共に,消化汚泥中のりんを結晶化させて分離回収するプロセスを考案した。本プロセスは,完全混合型の晶析リアクタと液体サイクロンからなる。予備実験では,消化汚泥中のりんの晶析現象を把握することで,微細なMAP結晶の発生を抑制する条件を検討した。また,処理量6m3/dのパイロット試験装置を下水処理場に設置し,嫌気性消化汚泥を対象に前記の実証試験を行った。実証試験では約6箇月間にわたり,消化汚泥中のT-P(全りん)の内30%以上をMAPの形態で安定して回収することができ,本プロセスの実用性を実証することができた。
エバラ時報 No.215 p.23 倉科 敬一 ほか
CMPコスト削減のための銅配線めっきの平坦化技術を考案し,検証した。貫通直孔の多孔質Padをウェーハ表面に押し当ててめっきすることにより,フィールド部のめっき成長を抑制し,直孔内にだけ柱状のめっきを成長させた。この柱状のめっきはケミカルエッチングで容易に選択除去でき,平坦で余剰めっき膜厚の少ないめっき膜を得ることができた。このようにしてできた銅配線めっき膜にCMP処理を行った結果,従来のめっき膜よりも短期間で処理することができ,また,良好な段差特性を得ることができた。
エバラ時報 No.215 p.31 三木 亮太 ほか
新型の浅井戸用ポンプHPA型の開発を行った。本製品には配管一体型ベースを採用し,また各吐出し口を連通させる連結管をベース下部に配置することで,吐 出し方向を3方向から選択可能とした。また,フロースイッチとチェッキ弁を一体化したフローチェッキを採用することにより,部品点数の削減によるポンプの 小型・軽量化(設置面積20%減少)を実現し,ポンプ設置性の向上を図っている。更に,電動機取付ナットを緩めるだけで,電動機を後方へスライドできる構 造とし,これによりポンプケーシングをユニットベースから取り外すことなくメカニカルシールの交換が可能となりメンテナンス性も向上している。
エバラ時報 No.215 p.34 楢崎 祐三 ほか
平成16年5月の大気汚染防止法改正で,揮発性有機化合物(VOC)の排出規制が追加された。この法改正で自主的に排出抑制が求められている中小規模の印刷業界・塗装業界等を対象にして,VOC分解のために外部からのエネルギー供給が不要で,環境への負荷が小さい生物処理法による小型VOC処理装置を海外から技術導入して製品化した。製品化に当たっては,日本国内における工場の実情に合わせて本技術を確認するため実証機を製作し,実際の施設でフィールド試験を行った。その結果,1年間特に手間をかけずに運転ができ,本技術の有用性を確認することができた。
エバラ時報 No.214 p.1 星薬科大学医薬品化学研究所 教授 米谷 芳枝
エバラ時報 No.214 p.3 大渕 真志 ほか
鏡面対称な二つのピットを有する吸込水槽において,各ピットの水位が交互に変動する現象が観察された。この現象は,ピット上流の拡大流路における流れの変動により生じたものである。本論文では,CFDによりこの現象を予測できることを示す。又,ピット内の水中渦と空気吸込渦について,メカニズムを説明すると共に,それらの実用的な対策についても示す。
エバラ時報 No.214 p.8 富永 英子 ほか
ノンクロッグ形羽根車を有する“DML型水中ポンプ”を国内のマンホールポンプ施設へ導入するに当たり,異物通過試験,モニタ試験を行った。その結果“DML型水中ポンプ”の良好な異物通過性,高効率による電気使用量の削減を確認できた。また,既設システムとの互換性を考慮し,一部機種を除いて着脱装置をそのまま使用できる形状とした。
エバラ時報 No.214 p.14 山口 弘史
(独)水資源機構が管理する印旛機場は,印旛沼北部調整池から長門川を介して利根川に排水する排水機場である。本機場は,建設当初から40年以上が経過しており,設備の老朽化により機能が低下していたため,機能回復を目的に,2003年3月から2006年7月にわたり,ポンプ設備改修工事を実施した。本工事は,過去に類を見ない手法で行われた大形ポンプ設備のリニューアル工事であり,設計・製作から現地施工まで,種々のソリューション技術が適用されている。
エバラ時報 No.214 p.20 茂木 芳夫 ほか
「極低温サブマージドモータポンプ」の生産体制を強化する目的で,当社袖ヶ浦事業所内に当該ポンプの試験設備を建設した。本試験設備では,低温実液(LPG,LNG)を使用した試験が可能であり,試験能力は,最大流量3000m3/h,最大圧力10MPa,ポンプモータ最大容量2000kWである。試験計測仕様は,ISO9906(Rotodynamic pumps-Hydraulic performance acceptance tests-Grades 1 and 2)に対応しており,性能試験のほかNPSH試験,振動計測試験などの機能試験を同時に行うことが可能である。遠隔監視と自動制御による設備運用の省力化,計測自動化による試験時間の短縮を実現している。
エバラ時報 No.214 p.24