水素関連事業プロジェクト「水素焚吸収冷温水機」「液体水素昇圧ポンプ」

荏原の「総力戦」で水素エネルギーの「世界初」に挑む ~水素関連事業プロジェクト~

「水素」を行きわたらせる未来への挑戦

「水素(hydrogen)」。CO₂を排出しない次世代エネルギーの筆頭のひとつです。世界各国で水素を「つくる・はこぶ・つかう」ための挑戦が行われ、既存燃料(LNG・灯油・ガソリン・都市ガス)に替わってあらゆる場所に水素を行きわたらせる未来を目指しています。
当社では2021年8月に社長直轄の「水素関連事業プロジェクト」を発足しました。これはあらゆる液体・気体を扱う製品の開発・運用経験を持つ荏原の各カンパニーが技術を結集しコラボレーションする、全社横断のチャレンジです。開発現場から世界初となる水素関連製品・技術が続々と生まれています。そのいくつかをご紹介します。

世界初の液体水素用遠心ポンプの開発に成功

一つは「液体水素昇圧ポンプ」。日本では海外で「つくる」水素を1/800の体積にする為に液化して日本へと「はこび」、そして「つかう」計画が進められています。
液化した水素を輸送する際には、液体にエネルギーを与えて送り出すことが必要です。そのためにポンプが必要とされるのです。しかし、-253℃という極低温の液体水素を大量に移送できる遠心ポンプは、これまでニーズが無かったため存在しませんでした。

ここにLNG(液化天然ガス。-162℃で液化)用昇圧ポンプの技術を応用しつつ、当社が挑みました。液体水素はLNGよりも低温であるだけでなく、密度が小さいため気化しやすい、極めて繊細な液体です。そのため液体水素に特化した設計へと変更することで、世界初の液体水素用遠心ポンプの開発に成功しました。
現在は、世界のお客さまやパートナーと連携しながら、水素社会への実装準備を進めています。日本そして世界で広がる水素サプライチェーンをこのポンプでつないでいくことによって、水素社会実現への重要な一躍を担うことを目指しています。

世界初の水素用吸収冷温水機が完成

もう一つの「世界初」は、まだ少し遠い未来に思える水素を「つかう」装置。水素を燃料とした「吸収冷温水機」です。
「吸収冷温水機」は主に都市ガスなどを燃料にする冷暖房用の熱源装置で、ビル・工場・空港など大規模な施設に快適な冷暖房空間を提供するものです。とても身近な装置ですが、その燃料を都市ガスから水素にチェンジすることは決して簡単ではありません。水素は都市ガスに比べて燃焼速度が速い・火炎の温度が高い・燃焼範囲が広いなど、万が一漏れた際に事故が起きやすい性質を持っています。そのため都市ガス用の安全装置だけでなく、配管への逆火防止装置、停止時に水素配管中に不活性ガスを注入して不慮の事故を防ぐなど「水素専用」の安全設計を行い、世界初の水素用吸収冷温水機が完成しました。

水素を「つかう」未来の社会に貢献する

いま、この新しい「吸収冷温水機」は、水素のサプライチェーンが確立し私たちの生活に水素が欠かせない存在となる時代を待っています。まだ「つくる」「はこぶ」試みが主流であるなかで、水素を生活の中で「つかう」方法は何だろうか。それを探るための開発でもあります。

これらの「世界初」は、未知のエネルギー「水素」に対する当社の「総力戦」といえるプロジェクトから生まれました。ポンプをはじめとした回転機械を出発点とする荏原製作所が未来の社会に貢献するための大きなチャレンジです。