EBARAメンテナンスクラウド
IoTでビル建物内装置の故障を見抜く「設備点検」のデータ基盤 “EBARAメンテナンスクラウド”“ワイヤレスセンサーQiDe(キーディ)”
ポンプを安定稼働させるメンテナンス

日本国内には工場、エネルギー施設、水道施設、商業施設をはじめとした数えきれない大規模な建築物があり、その内部ではポンプ・送風機・冷却塔・冷凍機などが配管でつながり、システム化されて働いています。その数は当社の主力製品である「汎用量産ポンプ」だけでも全国で約1,000万台超。そのすべてが正しく設置され稼働するだけでなく、年間何回かの点検と熟練した保守員によるメンテナンスを必要としています。そこに多くのコストと人の手をかける事によって、安全な日常が支えられているのです。
「振動」と「温度」を24時間遠隔監視

装置の突発的な故障とは言え施設を止めるわけにはいきません。そのための膨大な維持コストをテクノロジーで解決する仕組みが動き出しています。その一つが「EBARAメンテナンスクラウド」です。施設内の装置にボトルキャップほどの小さなワイヤレスセンサー「QiDe(キーディ)」を設置し、「振動」と「温度」を24時間遠隔監視し、分析するデータ基盤です。
QiDeから収集されたデータはダッシュボードで分析結果を確認でき、異常の兆候が確認されると利用する企業の担当者様、また当社のアフターサポートに即時で通知される仕組みになっています。データが蓄積されることでより精度高くメンテナンスの時期を判断し、将来は故障を予知することを目指しています。定期点検を念のため繰り返すのではなく、故障の可能性をいち早く発見し要求に応じて保守する体制を敷くことができれば、省人化・省コスト・省エネにもつながります。
しかしながらその開発は容易ではありませんでした。ものづくりの企業である当社のエンジニアにはクラウドなどIoTには知見が浅く、精通する人材が必ずしも多くありませんでした。つぶさに装置を点検し、保守に駆けつけるプロとしてのノウハウをデジタルに置き換えるために、パートナー企業と議論を重ね、2022年11月に事業化のスタートを切ることができました。
複数の機器を連携させ、異常を迅速に察知

この新しいチャレンジは、荏原の複数の機器・装置をデータ連携させる事で、監視をより広範囲に一元化し、新たなユーザーの価値創造につなげています。
例えば「冷凍機」の分野ではQiDeが開発される以前から独立した監視システム「RISSA」により制御盤を通して遠隔監視され、運用されていますが、このRISSAをEBARAメンテナンスクラウドに連携させることで、従来はユーザーでは確認することができなかった機器の状態データを、閲覧することができるようになりました。これにより、異常や問題を迅速に察知し、突発的な故障を防ぎ、計画的なメンテナンスにつなげることができるなど、ユーザーの省力化に貢献しています。
「スマートビルディング」の実現を目指して
長年機器の開発と保守を担ってきた当社だからこそ構築できたIoTの取り組みであり、施設内点検のDX(デジタルトランスフォーメーション)とも呼べるEBARAメンテナンスクラウドは、2023年末時点で全国で690台にQiDeを設置している段階です。設置できる機器はポンプだけで予測しても1,000万台。さらに多くの荏原の機器へ、そして当社の機器のみならず、他メーカ様の機器にも使用されることで、いままで人力で行うことが常識であった施設内の点検がまるごとIoT化される「スマートビルディング」の実現を目指しています。
QiDeという小さなセンサーが、私たちの生活を見守る新しい時代の縁の下の力持ちとなるための挑戦は走り出したばかりです。