冷凍機遠隔監視システム「RISSA」
冷凍機遠隔監視システム「RISSA」で挑戦する「ビル」の省エネ
巨大ビルの「節電」でSDGsに貢献する

SDGsの大きなテーマである「地球温暖化」。その進行を防ぐために私たちが日常の中で工夫できることは何でしょうか? 移動手段を徒歩や自転車に変えてみる。太陽光や風力などの再生可能エネルギーを扱う電力会社と契約してみる。なかでももっとも身近なチャレンジのひとつは「節電」ではないでしょうか。消費電力を抑え、発電によるCO₂発生を低減することです。特にご家庭で消費電力が大きな機器が「エアコン」。適切な温度設定だけでなく、汚れたフィルターを掃除して空調性能を保つといった身近な「メンテナンス」も、SDGsへの貢献になります。
では、そのエアコンが「家庭」用ではなく「巨大なビル」用だった場合はどうなるでしょうか。オフィスビルの消費エネルギーのおよそ4割以上が「空調」と言われており、関連機器のメンテナンスは莫大な省エネ効果を通じてカーボンニュートラルへの大きな一歩になります。当社は施設全体を空調する大出力のエアコンの心臓部である「冷凍機」や「冷温水機」のトップクラスシェア企業です。しかし、長さと高さが数メートルにもなるこれらの装置のメンテナンスは決して簡単ではありません。
冷凍機が設置されているビルは店舗・病院・公共施設・オフィス・工場プラント、それら複数の建造物に一括して空調をまかなう「地域熱供給施設」などあらゆる場所であり、24時間どこかで空調が動き続け、そのなかにある冷凍機は一台ごとに異なる環境の影響を受けています。
遠隔で状態を監視する「RISSA」を開発
それらが常に安全に稼働するようメンテナンスされるためには、どんな方法が最適なのか。そこで荏原は「自社製品の状態を遠隔で監視する」方法を模索し続けてきました。スタートは1980年代。制御盤とセンサーで冷凍機の運転状況を記録し、30分ごとのデータで、有線の回線を通してセンターから確認していました。万が一の故障が発生した場合にはアラートが発報され、現場に荏原技術員が急行。まだインターネットが普及していない時代に確立されたシステムです。
こうしたサービスがテクノロジーの発展とともに2022年にアップデートされました。「RISSA」と名付けられた新たな冷凍機リモートメンテナンスのシステムは、LTEで1分ごとの状態を監視し、センサーで計測できる項目も大幅に増やしています。このRISSAによって解決を目指す課題は「メンテナンス」という作業そのもののアップデートです。
現在、冷凍機は稼働年数で部品交換のスケジュールを決め、数ヵ月に一度のパターン化された点検が必要です。定期点検で突発的なトラブルを防止し、万が一のトラブルには当社技術員が計測機器と五感を駆使して音や振動などから装置を診断します。この作業をテクノロジーで代替できれば毎日が定期点検と同等の診断をしていることになり、お客さまによる日常点検の負荷も小さくなるため「省人化」にもつながります。
故障を防ぎながら「都市まるごと」の省エネを目指す

RISSAは冷凍機内部の温度や圧力データなど傾向で管理できる故障予兆は高精度で検出可能。そして「省エネ」にも貢献します。将来は冷凍機の運転データというビッグデータをAIで分析し、冷凍機や周辺設備のエネルギー消費が最小になるよう各設備の運転データが最適化されます。冷凍機・冷却塔・ポンプのノウハウを持つ当社だからこそ可能な、全体最適の省エネ提案が可能になります。
こうした機能をクラウド管理するデータ基盤も立ち上がりました。2022年11月に事業化した「EBARAメンテナンスクラウド」は、施設内環境を装置に取り付けたセンサーを通してトータルで監視するクラウドサービスです。監視できる装置はポンプ・送風機・冷却塔など。そしてEBARAメンテナンスクラウドにRISSAを連携させることで、複数の機器が繋がりあう施設における統合的な監視とデータ活用がユーザー側でも可能となり、ユーザーの省力化に貢献しています。メンテナンスのためのネットワークを形成し、個別最適化された部品交換によって事故を防ぎながら「都市まるごと」の省エネを大きく前進させていきます。