掲載号: No. 266

水素を「はこぶ」
−水素ガスの輸送・昇圧−


執筆者

前田 淳
Jun MAEDA

コーポレートプロジェクト 水素関連事業プロジェクト

1.エリオットグループについて

エネルギーカンパニーに属するエリオットグループ(以下,エリオット)は,コンプレッサ,タービン,クライオ製品およびそのソリューションを提供しています。これらの製品・ソリューションは,オイル&ガス市場(石油精製,石油化学,LNGなど)を始めとした幅広い産業で利用され,世界中のエネルギーインフラを支えています。

2.エリオットの水素サービスに向けたコンプレッサソリューション

エリオットではエネルギーや化学原料に用いられるガスを圧縮・輸送するための機器としてターボ式(図1:遠心式の一例)のコンプレッサを設計・製造・販売しています。

図1 遠心式コンプレッサ構成図例

化石資源を代替するクリーンなエネルギーキャリアや化学原料として期待される水素は,常温では気体(ガス)の状態です。これを生産地から消費地までパイプライン等で輸送する,或いは燃料やプラスチックなどに化学合成するといった場合に水素ガスを昇圧する必要があり,そのガス圧力は用途に応じて様々です(数bar~数百bar)。

水素ガスコンプレッサは大規模な水素インフラを社会実装するために必要不可欠な製品です。これまでエリオットはオイル&ガスプラント等に向けて300台超の水素ガスコンプレッサを納入してきました(図2)。

図2 水素コンプレッサ外観例

3.水素サービスに向けたエリオットの新たなソリューション

この豊富な実績とエリオットが持つ圧縮技術を活かし,機器配置にアレンジを加えたFlex-Op水素コンプレッサ(図3)を開発しました。新しい水素社会に向けたソリューションを提供致します。Flex-Op水素コンプレッサの特徴はその構成(アレンジメント)にあり,図4に示すように,1つのマルチピニオンギアボックスを介して最大4台のバレル型コンプレッサを柔軟な組み合わせで運転することができます。従来のタンデム配置のアレンジで最大10段の羽根車を配列する設置スペースに,Flex-Opは最大40段を配列することが可能になりました。 他の燃料に比べ低分子量で低粘性,軽量な水素ガスを少ないユニットで昇圧することができ,初期コスト低減や設置場所の省スペース化に貢献します。

図3 Flex-Op水素コンプレッサイメージ

図4 従来アレンジメントとFlex-Opの構成(4-Bodyトレーンの例)

4.新たなエネルギー社会に貢献するエリオットのビジョン

水素コンプレッサについては,現在は,水素の液化,水素ガス圧送などに適した,大容量向けの高純度水素圧縮機の開発を行っています。さらに,革新的なロータの高速化や,小型化,省動力化を促進しています。

水素サービスの他,CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素の回収・有効利用・貯留技術),地熱発電など新たな社会への変化に応えるため,アンモニアやCO2などの流体を取り扱う機器・サービス・ソリューションの提供を通して,社会貢献していきます。

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