掲載号: No. 266〔納入製品・施設紹介〕

藤沢市北部環境事業所向け可燃ごみ焼却施設の納入

Installation of Incineration Plant for Fujisawa Northen Environmental Office

執筆者

蜂屋 直樹*
Naoki HACHIYA

手賀 智治*
Chiharu TEGA

平山 歩*
Ayumu HIRAYAMA

*

荏原環境プラント㈱

神奈川県の藤沢市北部環境事業所に可燃ごみ処理施設を2023年3月末に納入した。本施設は水冷火格子を導入したストーカ式焼却炉を採用し,安定したごみ焼却を行うと共に,蒸気常用圧力4MPa×常用温度430℃のボイラを採用することで高効率なエネルギー回収を可能とした。さらに本施設の特徴として可燃ごみ等搬出装置,可搬式ごみ投入装置を設置している。本書では本施設の施設概要・特徴と運転状況を報告する。

We installed an incineration plant for Fujisawa Northen Environmental Office in Kanagawa Prefecture at the end of March 2023. This plant uses a grate-type incinerator with the latest technology to ensure stable waste incineration; the high-temperature / high-pressure boiler has a normal steam pressure of 4 MPa and a normal temperature of 430 °C to achieve highly efficient energy recovery. Furthermore, as a feature of this facility, a device for Carrying Out Combustible waste, etc., and a Deployment Inspection Device were installed. This report describes the overview, features and operational status of the plant.

Keywords: Municipal Solid Waste Incineration, Low air-ratio combustion, High temperature high pressure boiler

1.はじめに

藤沢市は北部環境事業所に150t/d(150t/24h×1炉)の能力を有する可燃ごみ焼却施設を建設した(図1)。

図1 藤沢市北部環境事業所

本施設は水冷火格子を導入したストーカ式焼却炉を有し,安定・安心なごみ処理を実現することはもとより,同敷地内のし尿処理施設及び1号炉と隣接敷地のリサイクルプラザ藤沢の運営を考慮した施設の建設・運営を基本理念としている。

本報告では本施設の概要・特徴と運転状況について紹介する。

2.施設概要・特徴

2-1 事業内容

藤沢市は2016年4月の藤沢市焼却施設整備基本計画を元に北部環境事業所の既に廃止をした旧2号炉を解体し,新たに150t/d(150t/24h×1炉)の新2号炉を建設する運びとなった。

本事業は同敷地内の直営のし尿処理施設及び民営の1号炉を稼働しつつ旧2号炉の解体,新2号炉の建設,運営を一括で発注するDBO(Design Build Operate)方式が採用された。

2-2 建設工事概要

図2に建設工事の工程概要を,図3に全体配置図を示す。

図2 建設工事工程

図3 全体配置図

本事業は極狭地でありながら解体工事が含まれていること,既存施設の運営を見据えた上での収集車両の動線や特別高圧電源の切替工事等留意するべき点が多い事業であったが,北部環境事業所及び他施設の運営会社と綿密な調整を行い予定とおりに竣工に至った。

2-3 設備概要

表1に可燃ごみ焼却施設の主要な設備概要を示す。

表1 設備概要(可燃ごみ焼却施設)
受入供給設備
ごみクレーン 全自動クレーン×2基
燃焼設備
焼却炉 全連続燃焼式ストーカ炉
処理量:150t/d×1炉
燃焼ガス冷却設備
ボイラ 自然循環方式水管ボイラ
蒸発量:26 806kg/h×1缶
蒸気条件:4.0MPaG×430℃
排ガス処理設備
集じん方式 ろ過式
脱硝方式 無触媒脱硝
塩化水素・硫黄酸化物除去方式 乾式(消石灰噴霧)
ダイオキシン類及び水銀対策 活性炭吹込式
余熱利用設備
蒸気タービン 2段抽気復水式
発電機 3相交流同期発電機 4 440kW
灰出し設備 
焼却灰 加湿水冷後ピット&クレーンによる搬出
飛灰 加湿後ピット&クレーンによる搬出
排水処理設備
プラント排水 凝集沈殿・砂ろ過処理後,場内再利用及び活性炭処理後敷地内し尿処理設備へ送水
生活排水 敷地内し尿処理設備へ送水

また,図4に可燃ごみ焼却施設の設備フローを示す。

図4 可燃ごみ焼却施設フロー

施設に搬入されたごみは,プラットホームからごみピットへ投入される。ごみピットは受入部と貯留部の2部構成となっており,受入部で受け入れたごみは貯留部へ移動され,貯留部で攪拌された後にごみクレーンで焼却炉に投入される。焼却炉内で850℃以上の高温で焼却処理され,焼却灰は灰冷却装置で加湿冷却され,その後灰搬出装置,灰分散機を介して灰ピットにて貯留される。

焼却炉から排出される排ガスはボイラ,エコノマイザで170℃まで冷却された後,活性炭及び消石灰を噴霧し,集じん装置でばいじんを捕集,酸性ガスを中和処理,水銀及びダイオキシン類を吸着除去する。窒素酸化物は炉出口部に尿素水を噴霧することで除去している。

集じん装置を出た排ガスを一部分岐させ,炉内に攪拌空気として吹き込む排ガス再循環方式を採用することで,低空気比でも安定した燃焼を維持している。

ボイラは蒸気常用圧力4MPa×常用温度430℃を導入し,建設・運営費用の両立を念頭に高効率エネルギー回収を実現している。

また,本施設で発電した電力は本施設利用の他,既存施設へ供給し余剰電力は電力会社へ売却している。隣接する既設1号炉も2号炉とは別にごみピットから煙突,蒸気タービン発電機を保有しており,互いに休炉中は電力供給を受ける計画であり年間を通して電力会社からの買電日数はごく僅かになる計画としている。

3.運転状況

3-1 燃焼排ガス

性能試験時の各排ガス測定値を表2に示す。いずれの値も保証値を下回り性能を十分に有していることを証明した。

表2 性能試験結果
規制物質  保証値 性能試験結果
ばいじん g/m3(NTP)※1 0.01 0.001未満
塩化水素 ppm※1 25 1.5
硫黄酸化物 ppm※1 25 3
窒素酸化物 ppm※1 50 35
一酸化炭素 ppm※1 ※2 30 9
ダイオキシン類 ng-TEQ/m3(NTP)※1 0.1 0.0029
水銀 μg/m3(NTP) 30 0.10

※1 乾きベース O212%換算値
※2 4時間平均値

図5に性能試験時のトレンド例を示す。性能運転時のごみ発熱量実測値は6 350~8 660kJ/kgであり燃焼調整に際しては短期的な変動もあったものの,酸素濃度は低めで安定しており,窒素酸化物も無触媒脱硝による制御の効果により低値で安定しつつ,一酸化炭素のピークも抑制できている。

図5 酸素濃度と窒素酸化物,一酸化炭素の経時変化

3-2 発電効率

今回採用した4MPa×430℃ボイラにより高効率エネルギー回収が可能となった。竣工から約半月の発電量と発電効率の相関グラフを図6に示す。本施設は処理するごみ質が隣接するリサイクルプラザ藤沢からの破砕残渣による影響を大きく受ける。このため計画ごみ質は基準質ごみ(設計低位発熱量9 800kJ/kg)と高質ごみ(同13 300kJ/kg)の中間時に最高効率とする設計としていたが想定通りであり22%程度の高い発電効率を確認できた。

図6 発電量と発電効率の相関

3-3 ボイラ性能の安定性

性能試験時の主蒸気温度と過熱器出口排ガス温度の推移を図7に示す。安定して蒸気温度400℃以上を実現しており,過熱器出口排ガス温度の上昇も見られなかった。

図7 主蒸気温度と過熱器出口排ガス温度の推移

4.その他の設備紹介

4-1 渡り廊下

既設管理棟と本施設の間には既設1号炉があり,通常では屋外の一般道路を経由しないと管理棟と本施設の往来が出来ず,見学者及び関係者の安全が確保できない。このため,渡り廊下を設けた(図8)。

図8 渡り廊下

4-2 可燃ごみ等搬出装置

藤沢市は石名坂環境事業所と北部環境事業所に焼却施設を有し2施設3炉体制を保ちつつ各施設の更新工事を順に実施する計画で進めている。そのため,一旦ピットに貯留したごみを場外へ搬出可能な本装置を設置した。本装置のコンテナは石名坂環境事業所及びリサイクルプラザ藤沢で使用している装置と互換性を持たせている。本コンテナへの充填は本施設の定格ごみ焼却処理量(6.25t/h)と同量のごみを充填可能な能力を備えている(図9)。

図9 可燃ごみ等搬出装置

4-3 可搬式ごみ投入装置

搬入ごみをごみピットへ投入する前に展開検査が実施できる機器を設置した。

ウォーキングフロア式を採用することにより,ダンピングをすることなくごみを移動させながら安全に検査が可能とした。

また,本装置は可搬式であり使用しない時間帯には通常通りごみ投入扉は使用可能である(図10)。

図10 可搬式ごみ投入装置

4-4 ストックヤード棟ローラーコンベヤ

一般家庭の可燃ごみとビンは同じ収集車にて同時収集される。敷地内に入場しストックヤードにてビンが充填されたコンテナを荷下ろした後に施設内へ進む設備フローとなっている。このストックヤードには,傾斜を利用したローラーコンベヤを設置することでコンテナの移動作業の効率の向上及び作業員の負担軽減が図れるようにした(図11)。

図11 ローラーコンベヤ

4-5 壁面・床面映写設備

隣接するリサイクルプラザ藤沢の啓発棟内に啓発設備は充実しており,見学の順序はリサイクルプラザ藤沢の見学後に本施設の見学が想定されている。本施設の説明に独自性を備えつつ,短時間で行えるように見学者通路の壁面・床面を使用した映写設備を設けた。焼却されるごみの目線でのごみ焼却フローの説明映像を4台のプロジェクターで映写する(図12)。

図12 壁面床面 映写設備

5.おわりに

本施設は2023年3月に竣工し,現在順調に運転を継続している。本施設はDBO方式の事業で建設されたものであり,竣工後の20年間の長期にわたる運営を継続実施していく安心安全かつ経済的なごみの焼却処理に加え,環境啓発活動を通して,地域の文化,歴史に根付いた地域から信頼される施設を隣接する施設と協同し目指して努力していく所存である。

最後に本施設の建設において多大なご指導を頂いた北部環境事業所の関係各位,及びご協力頂いた関係各位に厚く御礼申し上げる。

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