エバラ時報 No.245 p.1 早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 機械科学・航空学科 教授 宮川 和芳
エバラ時報 No.245 p.3 杉山 憲一
水潤滑下での摩擦摩耗特性に非常に優れたSiCセラミックスは,水潤滑下でのすべり軸受に使用されているが,超純水潤滑下においては異常摩耗が発生する場合がある。そこでSiCセラミックス表面に気相合成法を用いてダイヤモンド皮膜をコーティングした試験片を製造し,水中でのトライボロジー特性,エロージョン・コロージョン特性を評価した。水道水中,超純水中において,トライボロジー特性はSiCセラミックスとダイヤモンド皮膜に大きな差は見られない。一方,超純水に対するエロージョン・コロージョン特性について,SiCセラミックスの壊食は大きいが,ダイヤモンド皮膜はほとんど壊食せず優れた特性を示す。ダイヤモンド皮膜は超純水潤滑下でのすべり軸受に適した材料であると言える。
トップランナーモータ搭載 省エネルギー形給水ユニット新フレッシャー 3100型
エバラ時報 No.245 p.8 金田 一宏 ほか
ビルやマンション向けの給水設備として,長年販売してきた給水ユニット,フレッシャー3100型のモデルチェンジを2013年10月に行った。本製品は,2015年度からスタートするモータの効率規制基準を満足するトップランナーモータの搭載と,新開発のEモード運転によって,更なる省エネルギー形へと進化している。また,操作性や施工性,故障時のバックアップ機能を向上させ,「Save Energy Pumpシリーズ」の給水ユニット第一弾として市場投入した製品である。
アセプティックリンサー排水回収装置「ARRoWSⓇ」(飲料用無菌充填装置向け,洗浄排水リサイクル装置)
エバラ時報 No.245 p.13 髙橋 洋平 ほか
飲料工場のアセプティック充填システムでは,ペットボトルの洗浄排水量が多い。洗浄排水の回収を行うためにはボトル殺菌剤由来の薬剤の除去が必要であるが,水ing㈱では洗浄排水の回収のために,独自の構造の還元塔+アニオン塔+ROのフローを採用したアセプティックリンサー排水回収装置「ARRoWSⓇ」を開発した。ARRoWSⓇは,①回収設備内の微生物の増殖を抑えられる,②ペットボトル若しくは殺菌剤由来の微量の有機成分の除去を行うことができる,③水の回収率を高くすることができる,④腐食性の強い排水が発生しない,⑤設置スペースが小さいなどの特長を有する。
エバラ時報 No.245 p.17 能見 基彦
ポンプ内のキャビテーション現象に関し基礎的な内容を紹介する。まずキャビテーションの発生について,水の飽和蒸気圧線図に基づき解説する。水が,その温度によって決まる飽和蒸気圧まで圧力が低下すると,激しい気化現象を起こす。これがキャビテーションの発生原理である。流体管路中においては,絞り部などで増速し,同時に静圧が低下し飽和蒸気圧まで下がるとキャビテーションが発生する。ポンプにおいては,翼負圧面で圧力が低下し,キャビテーションが発生するのが典型例である。このほか,バルブの急閉やポンプトリップなどの過渡的な現象においても一種のキャビテーションである水柱分離が発生する。ポンプにキャビテーションが発生する際の問題点の一つは,所望の圧力がでなくなる,揚程低下である。これと関連し,吸込性能曲線,NPSHA,NPSHRについて説明する。
給水装置 製品技術紹介 -第1回 各種給水方式の特徴について-
エバラ時報 No.245 p.21 唐木 亮太郎
当社は,集合住宅やオフィスビル等の給水設備として使用される給水装置(給水ユニット)の製造・販売を,1970年代半ば以降実施している。本稿では,給水装置の各種給水方式の特徴について,当社製品の変遷を交えながら紹介する。なお,今後数回にわたり,給水装置に関する技術情報として,給水装置の設置方法,各種給水方式の詳細,保守・点検,関連規格等について,順次紹介する予定である。
エバラ時報 No.244 p.1 大阪大学大学院工学研究科 准教授 博士(工学) 佐野 泰久
エバラ時報 No.244 p.3 香川 修作 ほか
従来実績を超える2980min-1の高回転固定速度かつ高落差のポンプ逆転水車を設計開発した。開発は従来実績を基にして,CFDを用いて検討し,最終設計の性能をモデル試験で確認した。併せて従来からあまり明確ではなかった固定回転速度ポンプ逆転水車のQH性能調整法についてもCFDとモデル試験から検討した。
エバラ時報 No.244 p.7 八木 圭太
触媒表面反応を利用する新しい研磨技術である触媒表面基準エッチング法(CARE)による窒化ガリウム基板の高効率・高性能平坦化技術を開発した。光電気化学反応を利用することで除去レートを高速化するSTEP1と,貴金属の酸化作用を利用して表面を高精度に平坦化するSTEP2からなる2ステップ研磨法を提案し,機械加工(ラッピング)後の表面から50分で研磨が完了することを示した。また,研磨後の表面は原子レベルで平坦であり,かつ表面ダメージが存在しないことを確認できた。
エバラ時報 No.244 p.13 中山 博文 ほか
ペンタムⓇ樹脂を使用した製品を新たに開発した。強い自吸能力をもった自吸式ポンプと大水量・低揚程の斜流ポンプ及びウォータハンマによる圧力上昇を緩和する逆止弁である。いずれの製品もこの樹脂の特長である耐食性,耐摩耗性を活かして幅広い用途に使用できる製品である。
エバラ時報 No.244 p.18 藤井 宗俊 ほか
新川の下流域に位置する新川右岸排水機場は,1953年に運用が開始された歴史の古い排水機場である。その老朽化に伴い,新機場が隣接して建設され,ポンプ設備を全面的に更新し,2012年から運用が開始された。この歴史的な全面改修に当たり,当社のポンプ関連設備に関わる技術を基に,ポンプや電動機の高効率化によるランニングコスト低減のほか,耐食性の向上や旧機場の使いやすさを継承するなど,設備の維持管理性向上のための様々な工夫を導入している。また,本機場は,遠隔監視操作による常時排水が行われており,その新旧切替が課題であったが,綿密な現地調査と工夫によって,短期間かつ運用に支障を来すことなく完了することができた。
既設流動床焼却施設の基幹的設備改良工事-水噴霧式排ガス冷却施設の事例-
エバラ時報 No.244 p.24 石川 龍一 ほか
既設焼却施設においては機能を改善しながら延命化を図る基幹的設備改良工事が行われている。機能改善は,温暖化対策としてCO2排出量を削減するものである。温暖化対策としては熱利用率の向上と設備のエネルギー消費量削減がある。流動床焼却炉はガス化溶融システムの実績を踏まえて,消費動力を大幅に削減するためのメニューが整っている。熱利用率向上が困難な水噴霧式排ガス冷却方式の流動床焼却施設において,基幹的設備改良工事を行い,プラントの消費電力量を20~30%削減できたので報告する。
エバラ時報 No.243 p.1 慶應義塾大学経済学部教授 細田 衛士
エバラ時報 No.243 p.3 岡本 有弘 ほか
旋回流型流動床焼却炉(TIF:Twininterchangingfluidized-bed)は,1984年に市場投入された当社のオリジナル技術であり,現時点で国内71施設,海外31施設が稼働中である。2013年9月末に竣工した平塚市環境事業センターは,当社としては8年ぶりのTIF型炉の納入となったが,その間に納入してきた流動床ガス化溶融炉の経験に裏打ちされた低空気比運転,高効率発電等の最新技術が適用されているため,次世代型流動床ごみ焼却施設として大幅に性能が向上している。本報では,次世代型流動床ごみ焼却技術の特長について,平塚市環境事業センターの運転実績を交えて解説するとともに,今後の流動床ごみ焼却技術の展望について述べる。
下水からのリン回収と高効率脱水処理~自立採算型リン回収プロセスを目指して~
エバラ時報 No.243 p.9 萩野 隆生 ほか
リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)粒子は下水消化汚泥中に存在し,脱水ケーキとともに廃棄されているが,回収できれば肥料又は肥料原料として再利用が可能な物質である。本研究では実証規模のMAP分離実験とパイロット規模の高効率MAP回収脱水試験を行った。実験結果から,嫌気性消化処理を採用する下水処理施設に対して本プロセスを導入することによって下水汚泥中のリンの約50%をMAPとして回収しつつ,汚泥脱水性を大幅に高めることが可能となり,維持管理コスト削減分で本プロセス導入費用を賄える可能性を見出した。
エバラ時報 No.243 p.15 鈴木 旭 ほか
真空式下水道システムは1990年に国内で初めて採用されて以来,全国各地,多くの地区で稼働中である。本システムで最も古い施設は既に24年を経過しており,今後多くの施設が更新時期を迎える。そのため,適時・適切な修繕と更新により,施設の長寿命化を進めていくことが求められ,ストックマネジメント手法が導入されてきている。当社は本システムの構成機器である(1)真空弁ユニット(2)真空ポンプ(3)真空弁ユニット故障監視装置の更新において,高機能化を実現した。これによって,システムの互換性を確保しながら格段に優れた性能を実現し,更新時期を迎えた古いシステムにおいても最新のシステムと同等の安定したシステムとすることが可能となった。
エバラ時報 No.243 p.20 大川 裕也 ほか
空港北トンネル他非常用設備改修工事は,トンネルを運用しながらの工事で,通行規制は夜間に行う条件であった。作業時間に制約を受けかつ,トンネル非常用設備としての機能を維持させながらの難工事であったが,作業方法,安全対策等の検討を行い工事を完了させた。
エバラ時報 No.243 p.25 檜垣 展宏 ほか
屋外設置の給水装置に対して,太陽光を模擬したランプ光を照射して,日射の影響を再現できる日射試験装置,及び周囲温度を制御する恒温室を導入した。恒温室は,比較的大型の給水装置を容易に搬入・据付けできる広さを確保し,ポンプ運転設備,及び海外向け製品にも対応可能な電源設備を備えたポンプ実負荷運転が可能な試験設備である
平塚市向け「次期環境事業センター整備・運営事業」の竣工と運営事業の開始
エバラ時報 No.243 p.29 安倍 真也 ほか
平塚市及び大磯町,二宮町のごみ処理を担う流動床焼却施設「平塚市環境事業センター」を納入した。315t/dの処理能力を有し,最新型施設として高効率発電,焼却残渣の全量リサイクル,高度排ガス処理設備を備えた循環型社会に対応した施設となる。本施設は,2010年5月に設計及び施工,運営を一括発注するDBO方式で受注し,2013年9月に竣工した後,10月からは,事業コストの削減と高品質のサービスの提供の両立を目指した20年間の運用を開始した。
エバラ時報 No.242 p.1 東京大学 工学院大学名誉教授 大橋 秀雄
エバラ時報 No.242 p.3 楯石 修 ほか
グローバル仕様深井戸用水中キャンドモータを紹介する。近年,新興国の人口増加,経済発展に伴う井戸水取水の増大によって,深井戸用水中モータポンプの市場が拡大していることから,当社ではグローバル市場から要求される高品質,高信頼性,高耐久性を有し,高スラスト荷重軸受を搭載した,海外規格(NEMA規格)に適合した深井戸用水中キャンドモータZBH4N,ZBH6N,ZBH8N型を開発し,グローバル市場に展開している。
FSRU用途のクライオジェニックポンプとエキスパンダの技術的特徴の紹介
エバラ時報 No.242 p.7 渡辺 秀治
FSRU(FloatingStorageRe-gasificationUnits)などをはじめとする浮体式液化天然ガス(LNG)設備用途に適用されるクライオジェニックポンプの技術的特徴,及び電力回収用途における2相エキスパンダの概念的図案について紹介。
エバラ時報 No.242 p.12 小島 善徳 ほか
各種分析機器及び電子顕微鏡等の理化学機器には,小容量の真空ポンプが用いられている。これらの用途向けに,小型ドライ真空ポンプPDV50型を開発した。このポンプは,2軸のロータが同期回転する容積移送式のドライ真空ポンプでありながら,独自の磁気カップリング機構付きモータによってタイミングギアを不要とした画期的な製品である。タイミングギアが不要なことから,構造はシンプルで潤滑オイルを必要としない。これによって,ロータは高速回転が可能となり,小型で10kgという軽量化を実現した。また,ポンプモジュールは取り付け方向に制約がないため,ポンプ設置の自由度が高い。さらに,ポンプ機械音の低減及び防音パッケージによって,運転時の騒音値は53dB(A)以下である。
エバラ時報 No.242 p.16 東 伸哉
荏原環境プラント㈱の次世代型ストーカ炉を,福島市あらかわクリーンセンターへ納入し,高効率な発電と灰の溶融処理を同時に実現している。ごみ焼却量1tあたりの発電量は、440kWh/t-ごみ(2010年度)であり,200t/d規模の施設として上位に位置する。さらに焼却主灰と飛灰の両方を溶融処理することで,最終処分率約4%を達成した。 また東日本大震災(2011年3月)では,本施設も被害を受けたが,荏原環境プラントは直ちに復旧作業を行い,震災後8日目に焼却処理を再開した。本施設では,東日本大震災以降も,溶融処理によって主灰を減容化している。これによって,東日本大震災によって逼迫した最終処分場の延命化に貢献している。
エバラ時報 No.242 p.21