エバラ時報 No.213 p.1 東京大学生産技術研究所 助教授 沖 大幹
エバラ時報 No.213 p.3 小三田 栄 ほか
合流式下水道雨天時下水の直接処理を目的として高速凝集沈殿処理方法を開発した。東京都の下水処理場にパイロット装置を設置し雨天時下水の処理試験を13回行った。水面積負荷50m3/(m2・h)で処理を行い,SS負荷除去率78~91%,BOD負荷除去率64~85%という良好な結果を得た。雨天時下水はアルカリ度低下により塩化第二鉄添加後pHが低下する。このpH低下により凝集状態が改善し処理性能は向上した。凝集剤添加後の撹拌方法として均一撹拌が可能である迂流式撹拌槽を採用した。水量低下時の撹拌力不足の抑制方法として,塩化第二鉄及びポリマ添加直後に短時間の急速撹拌を行いそれらを拡散させることが有効である。
エバラ時報 No.213 p.9 福田 明 ほか
ウェーハエッジロールオフのCMPプロセスへの影響をFEM(Finite Element Method)解析によって調べた。その結果,積層パッドにおいても単層パッドにおいても,エッジロールオフがウェーハエッジ部の研磨レート分布に影響を与えることが分かった。その影響範囲は,積層パッドの場合エッジから4mm,単層パッドの場合エッジから10mmに及んだ。ROA(Roll-Off Amount)が1.27μmの場合,エッジ近傍の面圧がウェーハ中央部より積層パッドで約30%,単層パッドで約23%大きかった。また,リテーナリング圧力と許容ROAとの関係は積層パッドと単層パッドで異なった。積層パッドでは,リテーナリング圧力を変えると許容ROAが0から0.6μmの間で変化したが,単層パッドでは,リテーナリング圧力を変えても許容ROAはほとんど変わらず,0から0.4μm程度であった。
エバラ時報 No.213 p.15 松村 正夫
近年のLNG需要の高まりと共に,LNGの液化基地,船,受入基地等サプライチェーンの各種新規設備が続々と建設されている。これらの設備にはLNG用回転機械が多数使用されている。当社は国内のLNG導入後の早い時期から,メカニカルシールタイプのLNG用ポンプをはじめ,サブマージドモータポンプ等の開発に取り組み技術蓄積と実用化を図ってきた。更に米国のサブマージドモータポンプメーカの完全買収で,実液試験設備や世界市場での製品供給実績等を獲得し,世界市場での事業展開を推進している。
エバラ時報 No.213 p.23 大垣 冬季
真空式下水道収集システムで使用される真空ステーションは,下水道整備地区の小規模化により,低コストでコンパクトなものが求められてきた。道路下埋設形真空ステーションは,集水タンクをマンホール内に収め道路下に埋設可能な構造とし,また正逆回転可能な真空ポンプで,集水タンク内に空気を送り込むことにより,汚水を圧送可能にした真空ステーションである。これにより従来必要だった圧送ポンプを不要としている。また,真空ポンプと制御盤はメンテナンス性を考慮した小型ユニット化したため,必要敷地を最小限にし,低コストで設置可能となり,真空ステーション用に建屋を建設する必要もなくなった。
エバラ時報 No.213 p.29 磯部 英次 ほか
くみ上げた地下水を散水することにより路面等の雪を溶かす“散水式融雪システムスノーラスタ”を開発した。本製品の主な特長は,①スノーセンサの降雪検知に雪片を直接カウントする方式を採用したこと②制御盤の制御部にマイコンを搭載したこと,などがあげられる。これらの採用により,次の効果が得られた。従来の降雪検知方式では風などによる影響を受けやすかったが,新方式採用により改善された。長年の地下水くみ上げによる地盤低下が問題となっているが,マイコン搭載により地下水の揚水管理が容易になった。また,ポンプの運転管理を容易にし,ポンプの消費電力が監視できるようになった。
エバラ時報 No.213 p.34 磯部 壮一 ほか
CMP装置は半導体製造工程において,必要不可欠なプロセス装置となっている。それに伴い,顧客における装置選定の重要な要素として性能向上に加え,高スループット化といった生産性に大きくかかわる要求も増大してきている。これら市場要求に応えながら,更に,高機能化,メンテナンス性向上,操作性向上など使用者側に立った改善をテーマに,F-REX300Sをベースとした新型装置F-REX300SⅡを開発した。
エバラ時報 No.212 p.1 北海道大学大学院工学研究科 教授 島津 洋一郎
エバラ時報 No.212 p.3 片岡 直明 ほか
メタン発酵の前処理として油脂分解酵素(リパーゼ)処理を組み入れたメタン発酵プロセスについて,豆腐製造排水と揚げ廃油を実験原料として回分系と連続系で検討した。回分実験では,油脂含有排水をリパーゼ処理することによって中性脂肪の96%が分解され,メタンガス転換率80%が得られた。メタン発酵連続実験では,油脂含有排水をリパーゼで前処理して高温メタン発酵した系で中性脂肪分解率99%,CODCr除去率72%,メタンガス転換率61%(CODCr基準)が得られた。油脂含有排水のメタン発酵には,リパーゼ前処理と高温メタン発酵の組み合わせが有効であることが分かった。
エバラ時報 No.212 p.10 八木 薫 ほか
高層ビル向けのインバータ搭載形自動給水ユニット(F3100高揚程形)の開発を行った。この製品は,新形ポンプEVML型の採用により80~250mクラスへの給水を可能にした。また水道法による「給水装置の浸出性能基準」に適合し,飲料水としての安全性を確保している。更に,故障時の断水を防ぐために,バックアップ機能を充実させ,万一の場合でも運転継続を可能にした。
エバラ時報 No.212 p.13 奥田 和孝
当社は,一般家庭用給水用途,工場給水用途,融雪・農事等インフラ用給水用途に使用される深井戸水中ポンプ及びその周辺機器を供給してきた。近年この分野において,省エネルギーや施工負荷軽減・据付スペース縮小等の要求が出てきている。今回,これらの要求に対応するため,インバータ方式・推定末端圧力一定制御が行える「フレッシャー3100シリーズ」に,深井戸用途の給水装置を追加開発した。
エバラ時報 No.212 p.16 筒井 栄治
業務用食器洗浄機などの比較的大水量かつ低揚程で,万一の異物混入にも対応できるポンプとしてDWO型ステンレス製渦巻ポンプを導入した。主要部品が防さび性に優れたステンレス製で,異物混入時を考慮しメカニカルシールプロテクタを搭載したセミオープン形の製品である。
エバラ時報 No.212 p.19 川井 政人 ほか
消火設備に搭載するための消火ポンプを開発した。今回開発した消火ポンプの主な特長は,ポンプ軸と電動機軸を一体化し,更に回転体の荷重を電動機内の密封玉軸受だけで支持する形式にしたことで,軸継手及びポンプ部の軸受が不要になり,軸方向長さを最大20%短縮したことである。もう一つの主な特長は,羽根車をクローズ形にして,主板・側板にライナリング,主板にバランスホールを設ける両ライナ方式を採用することにより,アキシャル荷重を軽減するとともに,軸封部に過大な圧力が加わらない構造にしたことである。性能面では,消火ポンプ用に新たに開発したハイドロを採用することにより,選定水量範囲が従来機種に比較して約20%拡大した。
フッ酸分離濃縮装置FTR及びFTRを利用したフッ酸リサイクルシステム
エバラ時報 No.212 p.23 中川 創太 ほか
新規開発の電気透析装置FTR,フッ素再資源化装置,これらを組み合わせたフッ素リサイクルシステムを用いて,フッ酸排水にかかわる環境負荷を低減し,更に再資源化が容易な形態でフッ素を分離濃縮し,フッ酸原料とすることを可能にした。FTRでは,構造の工夫と独自材料であるイオン交換不織布の採用で,これまで不可能であった膜透過性と腐食性が高いフッ素への適用と,高い分離濃縮性能を達成した。フッ素再資源化装置では,フッ素濃縮水をフッ酸製造プラントの原料として適合する性状のCaF2結晶とすることでフッ酸原料としてのリサイクルを可能とした。半導体,電子部品など製造工場の環境対策と資源問題の解決に貢献すると確信している。
エバラ時報 No.212 p.29 宮城 卓 ほか
横浜市北部第二水再生センターの第二ポンプ施設は,鶴見川下流流域の浸水対策として設置された「新羽末広雨水幹線」に貯留した雨水を東京湾に排除するポンプ場である。本施設は地下約80mにあり,国内の大形排水機場では最も地下深い機場である。大深度地下排水機場の建設費用の大半をしめる土木設備費縮減のため,吐出し口径1500mm,全揚程が70mという大形高揚程ポンプでありながらポンプ吐出し側に逆止弁等を設けないことによりコンパクト化を達成した。
エバラ時報 No.211 p.1 大阪大学大学院工学研究科 教授 付属超精密科学研究センター センター長 遠藤 勝義
中国万家寨引黄プロジェクト向けポンプ羽根車の耐エロージョン対策
エバラ時報 No.211 p.3 杉山 憲一 ほか
多量の土砂を含む中国の大河流域で使用されるポンプは,砂の衝突によるスラリー摩耗,及びキャビテーション壊食が発生し,深刻な問題になっている。また,使用される材料のエロージョンによる摩耗量の予測は,使用材料の選定,メンテナンスなどの観点から非常に重要な技術である。本稿では,耐エロージョン溶射皮膜の開発及びスラリー摩耗による体積減少量予測手法について紹介した。補修用に開発した自溶性合金皮膜は優れた耐エロージョン性を示した。また,スラリー摩耗量予測については,重要なエロージョン因子である衝突粒子の速度,角度などを考慮した摩耗量予測手法を提案した。
エバラ時報 No.211 p.11 井上 修行 ほか
排熱(温水)を駆動熱源とする発電装置の簡易化,コンパクト化を目指し,作動媒体の検討と膨張機の検討を行い,更に試作機による実機試験を行った。低温熱源で駆動するサイクル(蒸発温度77℃,凝縮温度42℃)を用いて,各種作動媒体による特性比較を行い,発電サイクルに好ましい作動媒体として,TFE,R123,R245faを選定した。実機試験装置ではTFEを用いることにした。膨張機はラジアルタービンとし,TFE用に新規に設計試作した。実機試験装置を,熱源に温水,冷却源に冷却水を用いて駆動し,発電電気は系統に連係した。実機試験から,発電サイクルの特性,膨張タービンの特性などを明らかにした。
電子線を用いたウェーハ欠陥検査装置(EBeye)の開発(第2報)
エバラ時報 No.211 p.21 寺尾 健二 ほか
当社では写像投影電子顕微鏡(PEM)技術を応用した半導体ウェーハ検査装置EBeye300を開発している。第1報で,この装置が原理的に走査電子顕微鏡(SEM)技術を応用した従来電子ビーム式検査装置よりも3~6倍高速で検査できることを報告した。
このたび,その設計コンセプトに基づいた装置を製作し,テストウェーハを用いて検査性能の評価を行った。その結果,500~600MPPSの高速検査が可能であること,画素寸法の80%の欠陥を90%以上で検出可能なことが分かった。
エバラ時報 No.211 p.28 大里 雅昭 ほか
半導体製造設備のエッチング装置やCVD装置のクリーニング工程で使用されるPFCsガス(PFCs:Perfluoro Compounds)やその副生成ガスの処理装置として,“F固定式排ガス処理装置”を開発した。この装置の特長としては,PFCsガスの高効率処理が可能であること,分解したふっ素(F)成分を処理剤に固定するため完全ドライ式であることなどがあげられる。近年,PFCsガスの処理装置として普及し始めた燃焼式,ヒータ式,触媒式排ガス処理装置は,いずれも分解後に生じるF成分を水を用いて処理する方式が採用されており,半導体製造工場の水処理設備への負担増大につながっていたが,今回の開発でこれらの問題点が改善されると考える。なお,PFCsガスは,GWP(Global Warming Potential)値が大きく,CO2とともに地球温暖化対策に向けて削減に取り組む必要のある物質である。
エバラ時報 No.211 p.31 鈴木 一如
特許権を始めとする知的財産権に対する世界的な関心の高まりを受けて,その創造・保護・活用に関して昨今,産学官挙げての取組みが強化されている。当社はポンプに関する特許権を創業の基礎としている歴史上,特許に対する関心は高いが,知的財産に関する取組みは必ずしも強力であったとは言い難い。本稿では,21世紀型の企業として脱皮を図ろうとする当社の経営戦略の柱としての知的財産活動について,その考え方と実績を紹介し,合わせて企業における知的財産活動のあるべき姿を考える。
エバラ時報 No.210 p.1 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授 平尾 雅彦
エバラ時報 No.210 p.3 大谷 俊博 ほか
電磁超音波共鳴法(EMAR法)は,非接触で超音波を送受信できる電磁超音波探触子(EMAT)に超音波共鳴法を適用した方法で,接触に関するエネルギー損失がないので,材料の絶対的な超音波減衰係数測定が可能である。本研究ではEMAR法を用いてNi基耐熱合金ワスパロイのクリープ損傷を評価した。クリープ試験は大気中1073Kの温度下で数種類の単軸応力下で行った。クリープ進行に伴う1~6MHzの周波数範囲における超音波減衰を測定した。超音波減衰は音速よりもクリープ損傷に敏感に反応した。クリープ寿命の35~40%の間で超音波減衰は極大値を示し音速はわずかな減少を示した。これは負荷応力に依存していなかった。この現象はクリープの進行に伴う微視組織の変化,特に転位の可動性とγ’相の凝集・粗大化に起因することが分かった。そのことは透過型電子顕微鏡による転位組織の観察から裏付けられた。EMAR法はNi基耐熱合金材料のクリープ損傷評価と寿命予測を行える可能性をもっている。
エバラ時報 No.210 p.12 井上 修行 ほか
昇温型吸収ヒートポンプは,温水排熱などを直接的な駆動源として,より高温のエネルギーを得る装置であり,排熱利用サイクルとして期待されている。特に,高温エネルギーとして広範な利用先のある蒸気を製造するヒートポンプが期待されている。本研究は,昇温型吸収ヒートポンプサイクルに可逆サイクルを仮定して理論解析を行い,COP,昇温特性及びその限界値をカルノーサイクルと比較して明らかにした。またH2O-LiBrを用いたヒートポンプのシミュレーションモデルを作り,実機レベルの性能を検討した。熱源温水の流し方としては,再生器から蒸発器へと直列に供給する方式がCOP及び昇温特性から判断して最良であった。
エバラ時報 No.210 p.20 森 豊 ほか
従来,重要な交差点には信号機の非常用電源装置として,ディーゼルエンジン式発動発電機が設置されてきたが,使用時及び月1回程度の管理運転時に発生する騒音や黒煙が問題となっていた。一方,燃料電池は省エネルギー性,並びに環境保全性が良好なことから多方面にわたりその利用が考えられている。その中でも特に水素を燃料とする固体高分子形燃料電池は構造がシンプルでまた起動時間が短く非常用電源として適する。このような利点を活かし,水素を燃料とする空冷式1kW級固体高分子形燃料電池を交通信号機の非常用電源として適用する開発を行い,実証試験機を完成させた。更に実際の交差点で実証試験を実施し,良好な基本性能を確認した。
エバラ時報 No.210 p.26 西山 紀久雄
吐出し圧力50MPa級のデスケーリングポンプを開発した。開発に当っては,吐出し圧力の高低(3.2~49MPa)を短周期で繰返す急変速デスケーリングポンプの技術的課題であった高い繰返し応力と高サイクルの疲労問題を,ノズルの開口部の形状を楕円形状に整形し応力集中を低減することで解決した。
エバラ時報 No.210 p.29 菊入 俊明
発展著しい中国の重要な電力供給源として位置付けられている嘉興発電所(中国浙江省嘉興市)3,4,5,6号機向けに循環水ポンプを8台納入した。高潮位差に対応するため全長が長く,またプラント運転上最適制御のため可動羽根ポンプを採用し運転効率の向上(使用電力の低減)を図っている。羽根角制御装置のアクチュエータとしては電子制御式を採用し,防食装置としては電気防食法を採用するなど要素的な特長もある。
エバラ時報 No.210 p.32 池田 尚文 ほか
米国シカゴ地域の洪水対策プロジェクトにおいて放水路の流量制御用として,大形ロートバルブ6台を納入した。本バルブ(6台中2台)の使用条件の特徴として,流速が45m/sと非常に高流速であること,開閉時間が約30分と長いこと,開閉時のキャビテーションによる壊食や騒音,振動が予想されることが挙げられる。壊食防止対策として,弁胴及び弁体をステンレス鋼板とステンレス肉盛にて製作,キャビテーション緩和策として流れ解析結果に基づき,圧縮空気吹込み口を設置した。また高トルク対策として大容量・高リフト開閉機構(メカニズム)を,潤滑対策としてグリス注入タイプの軸受を採用した。このほかシリンダ位置検出用の防水型近接スイッチを設置するなど,新しい試みも含まれている。
エバラ時報 No.210 p.37